この回では、イルミネーションの歴史について整理していきます。


イルミネーションというと、どうしても「今どんな演出が流行っているか」「どんな商品が新しいか」といった話になりがちです。


しかし実際には、イルミネーションのあり方は、技術の進化だけでなく、その時代の社会状況や価値観と強く結びついて変化してきました。

順を追って見ていくことで、現在のイルミネーションがどのような前提の上に成り立っているのかが見えてきます。



■白熱灯の時代 ― 光ること自体が価値だった頃

イルミネーションの初期は、白熱灯が主な光源でした。


当時の夜の街は、現在と比べると暗い場所が多く、夜間に明るい空間が現れること自体が珍しい時代でした。


そのため、


  • ・どれだけ光っているか
  • ・どれだけ明るいか
  • ・どれだけ広い範囲を照らしているか


といった点が、イルミネーションの価値として分かりやすく受け取られていました。



白熱灯は、


  • ・消費電力が大きい
  • ・球切れしやすい
  • ・メンテナンスの手間がかかる


といった特性を持っていましたが、それ以上に「夜に光る風景そのもの」が人を惹きつけていました。



この時代のイルミネーションは、演出やストーリーというよりも、光の量そのものが中心にあったと言えます。



■LEDの登場 ― イルミネーションが現実的な選択肢になる

その後、LEDが登場します。

LEDの普及によって、イルミネーションを取り巻く環境は大きく変わりました。


  • ・消費電力が大幅に抑えられる
  • ・寿命が長くなる
  • ・球切れや交換の手間が減る


これにより、イルミネーションは「特別なイベントのためのもの」から、より現実的に導入できる演出へと変わっていきます。


また、LEDの小型化によって、設置方法や配置の自由度も高まりました。

樹木、建築物、街路、屋外空間などさまざまな場所に光を組み込むことが可能になり、
イルミネーションは空間設計の一部として扱われるようになります。



■青色LEDの実用化 ― 表現の幅が広がる転換点



LEDの歴史の中で、イルミネーションの表現を大きく変えた転換点のひとつが青色LEDの実用化です。


LED自体は、1960年代から存在していました。
赤色や緑色のLEDは比較的早い段階で実用化され、表示灯や信号、簡易的な表示装置として使われてきました。


一方で、青色LEDだけは長い間、実用化が困難とされていました。

その理由は、青色の光を安定して発光させるために必要な材料が非常に扱いにくかったことにあります。
電気を流しても安定した発光が得られず、明るさや寿命の面で実用に耐えなかったためです。


また当時は、
「赤と緑があれば十分ではないか」
「青色は用途が限られるのではないか」
といった認識もあり、青色LEDは長年“実現が難しい技術”とされていました。



しかし1990年代に入り、日本の研究者によって高輝度の青色LEDが実用化されます。



この出来事が重要なのは、青色の光そのものよりも、そこから派生した技術的な広がりにあります。

青色LEDが可能になることで、白色LEDが実現しました。


白色LEDは、「白い光」を直接発光しているわけではありません。
青色LEDの光の一部を、蛍光体によって別の色に変換し、それらが組み合わさることで人の目に白く見える光を生み出しています。


つまり、現在広く使われている白色LEDの多くは、青色LEDを基盤とした技術です。



この白色LEDの登場によって、イルミネーションは大きく性格を変えていきます。


それまでのイルミネーションは、色付きの光を「点」として使う表現が中心でした。
一方、白色LEDが普及すると、


  • ・空間全体の明るさを確保できる
  • ・建築や街路を自然に照らせる
  • ・他の色と組み合わせた設計が可能になる


といった変化が生まれます。


白色をベースにしながら、アクセントとして色光を加える。
あるいは、あえて白一色で空間を構成する。


こうした選択肢が生まれたことで、イルミネーションは「装飾としての光」から、空間を構成する要素へと広がっていきました。


青色LEDの実用化は、単に新しい色が使えるようになったという話ではありません。


イルミネーションを明るさ・照明・演出のすべてを含んだ総合的な空間設計として扱うことを可能にした点で、非常に大きな意味を持つ技術だと言えます。



■青色LEDの実用化から、次の転換点へ


青色LEDの実用化によって、イルミネーションは技術的に大きな自由度を手に入れました。


白色光をベースに、明るさを確保しながら空間全体を設計できる。
色の組み合わせによって、さまざまな雰囲気や世界観をつくることも可能になる。


この時点で、イルミネーションは「できるかどうか」という段階をほぼ超え、
どう使うか、どう見せるかというフェーズに入ったと言えます。


つまり、光の性能や技術そのものよりも、その光をどのように扱うかが問われ始めた時期でした。



そして、その問いが技術とは別の角度から、強く意識されるきっかけとなったのが2011年の東日本大震災です。



■東日本大震災 ― 光に向けられる意識の変化



2011年の東日本大震災は、イルミネーションの技術そのものではなく、
光に向けられる社会の意識を大きく変えました。


電力不足や計画停電が発生する中で、
「今、光らせることは適切なのか」という問いが生まれます。


ここで重要なのは、光の性能や安全性が問題になったわけではないという点です。


変わったのは、光をどう受け取るかという社会全体の感覚でした。


同じ光であっても、状況によって意味合いが変わる。


この出来事は、イルミネーションが単なる装飾ではなく、社会や人の感情と結びついた存在であることを改めて示すものとなりました。




震災後 ― 暖かい光が増えていく

震災以降、イルミネーションではゴールド系や電球色といった暖かみのある光が多く使われるようになります。


これらの光は、


  • ・安心感
  • ・落ち着き
  • ・やさしさ


といった印象を与えやすく、夜の街に溶け込みやすい特性を持っています。


この流れは、色の流行というよりも、光に託される役割の変化として捉えることができます。


■コロナ禍 ― 屋外コンテンツとしての再評価


新型コロナウイルスの流行は、人の行動そのものを大きく制限しました。


人が集まること、立ち止まること、長時間滞在することが避けられる状況の中で、多くのイベントや催しが中止・縮小されます。


その一方で、イルミネーションは屋外で完結し、通りすがりでも体験できるという特性から、改めて価値を見直される場面もありました。


特別な目的がなくても目に入る光の風景は、街に一定の安心感や継続性を感じさせる存在として受け取られるようになります。





■歴史を通して見えてくること

ここまで見てきたように、イルミネーションは技術の進化とともに変化してきましたが、同時に社会の状況や人の意識とも深く結びついてきました。


  • ・光ること自体に価値があった時代
  • ・技術によって表現が広がった時代
  • ・社会状況によって意味づけが変わった時代


こうした積み重ねの上に、現在のイルミネーションがあります。


■講義的まとめ

イルミネーションの歴史を振り返ると、それは単なる技術史ではなく、光と社会の関係をたどる過程でもあることが分かります。


私たちは、こうした背景を踏まえたうえで、VMDの視点を大切にしながらイルミネーションの提案を行っています。



イルミネーション部材の販売は全国対応とし、施工については浜松・静岡エリアを中心に、現地条件を踏まえた設置を重視しています。

歴史の積み重ねの上にある「今」を理解することが、空間に合ったイルミネーションにつながると考えています。

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