この記事は、自治体や商業施設でイルミネーションを担当し、提出された見積が予算を超えてしまった方に向けた内容です。

たとえば、事業予算が800万円なのに、見積が950万円になった場合です。


「商品を一律に減らしてください」と依頼すると、
全体が薄暗くなった割に、施工費や車両費が残り、思ったほど金額が下がらないことがあります。


予算を削るときは、商品数だけでなく、特注品の寸法、施工日数、高所作業、宿泊、配線、撤去まで含めて見直します。

残すべきなのは商品数ではなく、来場者が装飾の規模感や企画意図を判断する部分です。


見積が予算を超えたら、何から確認するのか


イルミネーションの見積は、主に次の費用で構成されます。

  • ・商品費
  • ・特注品・造作物の製作費
  • ・施工費
  • ・高所作業車などの車両費
  • ・運搬費
  • ・移動費・宿泊費
  • ・電源部材・電気工事費
  • ・撤去費・保管費


予算800万円に対して950万円の見積が出た場合、150万円分の商品を削れば、計算上は予算内に収まります。

ただし、商品だけで150万円を削ると、装飾の密度や主役となる部分まで大きく変わる可能性があります。

施工日数、高所作業車、宿泊日数なども見直せる場合は、商品だけに削減を集中させず、
見た目への影響が小さい費用も含めて調整したほうが、完成度を残しやすくなります。
業者には、次のように確認すると整理しやすくなります。

「商品費、施工費、車両費、宿泊費のうち、予算超過の主因はどこですか」

「商品を減らした場合、施工日数や車両日数も減りますか」

「見た目への影響が小さい減額方法はありますか」

どの費用が高いのかを把握してから、削減方法を検討します。


特注商品は、なくす前にサイズダウンを考える


シンボルとなる特注モチーフは金額が高く、減額時に削除候補になりやすい項目です。

しかし、特注品を完全になくすと、その企画ならではの特徴や、写真に残る要素まで失われる場合があります。

そこで検討したいのが、特注商品のサイズダウンです。


たとえば、高さ5mのモチーフを4mに変更します。

高さは20%減ですが、フレーム、LED、梱包寸法、運搬方法まで変わるため、製作費と物流費が20%以上下がる可能性もあります。


幅4mを3mへ変更した結果、大型トラックが不要になる、現場での組立時間が短くなる、高所作業車の使用時間が減る場合もあります。


奥行きを見直す方法もあります。
360度から見られる立体造作ではなく、主な観覧方向に合わせた半立体構造へ変更すれば、正面の存在感を残しながら、材料と照明を減らせることがあります。

ただし、周囲を歩ける場所や複数方向から撮影される場所では、背面の省略が目立ちます。

業者には、次のように相談すると意図が伝わります。

「このモチーフは残したいので、存在感を極端に落とさず、寸法や奥行きを見直せませんか」

イルミネーションの顔を消す前に、構造を軽くできないか確認します。



小さなオーナメントや2Dモチーフは減らしやすい


装飾には、数を減らすと寂しく見える商品と、多少減っても全体の印象が変わりにくい商品があります。


比較的減らしやすいのは、小型オーナメントや、小さな2Dモチーフです。

樹木へ設置する雪の結晶が30個ある場合、25個や20個に減らしても、配置を調整すれば大きな違和感が出にくいことがあります。

壁面に並べる小型モチーフも、10枚から8枚へ減らし、間隔を組み直せば全体のリズムを保てます。



一方、樹木へ巻くストリングライトや、建物の輪郭を表すライン照明は、数量を減らすと光の間隔が広がり、暗さが分かりやすくなります。

一律に20%減らすのではなく、空白が目立ちにくい商品から調整します。

減らしやすいものは、次のような装飾です。

  • 複数並べた小型オーナメント
  • 背景に配置した小型2Dモチーフ
  • 主役の周囲に置いた小物
  • 同じ形を繰り返している補助装飾

反対に、入口を縁取るライトや、撮影背景となる面状の光は、減らした影響が表れやすいため注意が必要です。




施工人数ではなく、総日数を確認する


見積を下げる方法として、1日あたりの作業員数を減らす案が考えられることがあります。

ただし、遠方施工では、総人工が同じでも、作業日数が増えるとかえって総額が上がる場合があります。

たとえば、4名で3日間施工する計画と、6名で2日間施工する計画は、どちらも合計12人工です。

人工数は同じですが、6名で2日間にまとめられれば、宿泊費、車両費、高所作業車、現場管理費などを1日分減らせる可能性があります。

仮に作業員6名が宿泊し、1人あたりの宿泊費が1万円なら、1泊減ることで宿泊費は6万円下がります。

さらに、高所作業車や警備員も日単位で手配している場合は、施工日数を短縮する効果が大きくなります。

発注者が人数を指定する必要はありませんが、
「作業員を増やして施工日数や宿泊日数を減らす方法は検討できますか」と確認することで、
商品を減らす以外の減額案を引き出しやすくなります。

これは本来、元請け会社や施工業者が工程を組む際に検討する内容です。

発注者が人数や日程を細かく指定する必要はありません。



ただし、費用構造を理解して確認することで、見積を作る側にも、根拠を整理した説明や再検討を求めやすくなります。

なお、作業場所が狭い、高所作業車が1台しか使えないなど、
人数を増やしても効率が上がらない現場もありますので、その点はご承知おきください。


人工単価だけでなく、施工全体の総額で判断します。





配線距離を短くすると、見えない費用を減らせる


装飾場所と電源が離れるほど、延長コード、分岐、防水処理、コードカバーなどが増えます。

歩行者通路を横断する場合は、養生や安全対策も必要です。

5か所の装飾を3か所へ減らしても、残した3か所が離れていれば、配線費や施工時間はあまり下がらない可能性があります。


一方、入口付近の柱、植栽、壁面へ装飾を集めれば、一本の配線経路から分岐しやすくなります。

配線計画を作るのは施工業者側です。

発注者がコードの長さや分岐方法まで指定する必要はありません。



ただし、減額案を受け取ったときに、次のような確認はできます。


「装飾場所を減らしたことで、配線部材や施工時間も下がっていますか」

「既存電源に近い場所へ移動すれば、さらに費用を下げられませんか」

「残した装飾が離れすぎて、配線費だけ残っていませんか」


こうした視点を持つことで、商品の数量だけを減らした形式的な減額案ではなく、
施工条件まで見直した提案を求めやすくなります。


発注者が工法を決めるための知識ではなく、見積内容の根拠を確認するための知識として使います。




左右対称を崩しても、来場者は意外と気づかない


入口の柱や植栽は、左右を同じ数量で装飾する計画が多くなります。


しかし、来場者が真正面から長時間見るとは限りません。

駐車場、駅、歩道など、近づく方向が偏っている施設では、よく見える側へ装飾を寄せる方法があります。

左右100球ずつを80球ずつに減らすと、両方が少し暗くなります。


一方、主に見られる側を100球のまま残し、反対側を50球にすれば、最初に目に入る印象は維持しやすくなります。

左右対称を崩す場合は、来場者が近づく方向や撮影位置を業者へ伝えます。

平面図や装飾現場写真だけでは、どちら側がよく見られるか判断できないためです。



高所作業は、少し減らすだけでは安くならない


高所装飾を半分に減らしても、高所作業車を1日借りる必要が残れば、車両費はほとんど変わりません。


高所作業費を下げるには、次のどちらかまで見直す必要があります。

  • ・高所作業車を使う装飾をすべてなくす
  • ・高所作業を一か所へ集め、使用日数を減らす


高さ6mの樹木3本を2本に減らしても、作業車の使用日数が同じなら、大きな減額にはなりません。

それなら、高木1本の光量を残し、ほかを脚立で届く植栽へ移すほうが、見た目と費用を調整しやすくなります。

確認するのは、高所の商品が何個減ったかではありません。

高所作業車の台数や使用日数が、実際に減ったかどうかです。


既存商品は新品と混ぜず、役割を分ける


既存商品を新品と同じ樹木や壁面へ混ぜると、光色や明るさの差が目立つ場合があります。


新品は入口、施設ロゴ周辺、撮影場所など、来場者に近い主役へ使います。

既存商品は、奥側の樹木、壁際、植栽の下部など、背景へ回します。

新品を「見せる光」、既存品を「暗さを消す光」と分ける方法です。


ただし、保管数量をそのまま使用可能数として計算してはいけません。

事前に点灯し、コードやコネクターの劣化も確認します。

保管箱に100本入っていても、100本すべてが点灯するとは限りません。


削減案は3段階で出してもらう


950万円の見積を800万円に下げる場合、最初から一案だけに絞ると、何を失ったのか比較しにくくなります。

業者には、目標金額別に複数案を依頼します。

A案:900万円

特注品や主役を残し、小型オーナメントや補助装飾を減らします。

B案:850万円

特注品のサイズダウン、高所作業の集約、施工日数の短縮まで含めます。

C案:800万円

装飾場所、特注仕様、施工方法を根本から組み直します。



3案を比較すれば、何を残すと、いくら必要なのかが分かります。

社内でも、「なぜ800万円案ではこの装飾を外したのか」を説明しやすくなります。



予算削減を依頼するときに伝えること


減額案を依頼するときは、残したい商品名ではなく、残したい目的を伝えます。

  • ・入口から装飾を認識できること
  • ・特注モチーフの特徴を残すこと
  • ・施設名と一緒に撮影できること
  • ・翌年度も商品を再利用できること
  • ・予算上限が800万円であること


「大型モチーフを残したい」だけでなく、「施設名と一緒に撮影できる場所を残したい」と伝えます。


目的が分かれば、サイズダウン、半立体化、別商品の組み合わせなど、我々側も代替案を出しやすくなります。

予算削減は、当初案から商品を均等に引く作業ではありません。

特注品の寸法、目立ちにくい小物、施工日数、宿泊、高所作業、配線などを組み替え、
予算内でも企画の目的が伝わる形へ再設計する作業です。

施工工程を組むのは我々業者ですが、発注者が費用の構造を理解していれば、削減額の根拠を確認できます。

「商品を減らしたから安くなりました」で終わらず、何が減り、なぜその金額になるのかまで説明を求めることが、
完成度を落としすぎない減額につながります。


すでに見積が出ている案件でも、予算上限、残したい目的、現在の提案内容が分かれば、減額方法を整理できます。

見積書や装飾パース、現場写真がある場合は、あわせてお送りください。

予算内で何を残せるか迷った際は、お気軽にご相談ください。



CONTACT

お問合せ